ユニクロの悪口言って100万円キャンペーン

ケーススタディ

【はじめに】

この記事はユニクロおよびファーストリテイリング社とは無関係ですが、もし、ご迷惑がかかる表現があるとしたら、責は全て筆者にありますので、ご連絡いただければ修正または削除します。

[ここから本編が始まります]

衣料品の小売店だった小郡(おごおり)商事が、ユニクロへ名称を変更してから4年後の1995年、新聞紙上で、

ユニクロの悪口言って100万円

というキャンペーンを展開しました。キャンペーンといっても、期間限定の販促キャンペーンや、競合の落ち度を指摘するネガティブ・キャンペーンではなく、自らの落ち度を、お客様に指摘してもらう

奇想天外なマーケティング・リサーチ

でした。このキャンペーンで集まった10,000通が、こんにちのユニクロの原動力となった話は有名。

(100万円の賞金で10,000通の応募ですから、顧客意見ひとつあたり@100の低価格!但し、新聞広告費等の諸経費別)

このコンテストについて、ユニクロの柳井社長は、次のように振り返っています。

  • 「応募のほとんどは、漠然と気づいていたことでした」
  • 「しかし、実際に“ここが悪い”“こう直してほしい”といわれてみなければ実感できなかった」
  • 「商品を改善するとき、どの商品の、どこが、どの程度悪いのかをつかむ必要がある」
  • 「その上で、出来ることと、できないことをはっきりさせることで、具体的に改善できた」

このように、クレームのほとんどは「漠然と気づいていた」暗黙知だったそうです。その暗黙知が、

  • 「ここが悪い」と形式知になることによって
  • 「どの商品の、どこが、どの程度悪いのか」をつかむことができ
  • その上で「具体的に改善できた」

と柳井社長は語っています。みんな、何となく気づいている、

暗黙知を形式知

にして、具体的に改善したわけです。こうした顧客意見の重要性については、拙著「売り込むな!期待をくすぐれ」を読むまでもなく、顧客意見は、見えるはずのない、自分の背中を、見せてくれます。それを知ることによって、

抽象的だった問題点を具体的に

できます。具体的とは

  1. 誰が
  2. 何を
  3. なぜ
  4. いつ
  5. どこで
  6. 幾らで
  7. どうするか

という5W2Hに分解すること。しかし、現実に、企業は、

  1. クレームが、発生
  2. クレームは、担当者の落ち度
  3. 落ち度は、責任追求

という構図になることを嫌う傾向にあります。

原因解明ではなく、犯人捜し

ですね。それが顧客意見を遠ざける原因の一番目ですが、実際、定性情報は気が滅入ります。しかし、そのまま放置しておくわけにいきません。そんなときは、

クレームの活かし方

について知るといいでしょう。そうした本がたくさん出版されているようです。

さて、顧客の意見を聞かずに放っておく原因の二つ目は、

  • 「それでナンボ儲かるんじゃい」
  • 「儲からんことは、やらん」
  • 「問題になったら対応すれば良い」

という危機意識の薄さに因ります。わかりやすくいうと、悪口を言われるのは、誰だってイヤ、聞きたくないということです。

しかし、ユニクロは、敢えてそれを行い、そこから得た情報を資源に成長しました。この事例をどう捉えるかは、それへ対するマネジメント層の意識次第。

悪事千里を走る

とは、よくいったもので、悪い噂ほど広まります。それが世の常。だから、クレームなら、頼まれなくても、思いつきますし、言えます。

もし、あなたが「顧客意見の集まりが悪い」とか「アンケートの回収率が悪い」と困っているようなら、

クレームを集めるほうが集まりやすい

でしょう。とてつもなく、気が滅入ると思いますが(苦笑)あとは、活かし方一つです。

[追記]

このページを御覧になった読者さんから時折、

「コンテストで、優勝したクレームは何でしたか?」

という質問を頂きますが、なにせ95年のこと、詳細は忘れてしまいました(苦笑)。確か、

「レジ待ちの列ができているのに、他の店員さんが手伝おうとせず、私語を交わしているのは許せない」

という類いだったと記憶しています。商品へのクレームではなく、スタッフに対するクレームだったんですねえ。

ユニクロを分析[1/3]お客様を切り捨てる?弱みを強みに活かす逆転の発想

https://0gasawara.blogspot.com/2010/04/uniqlo1.html

へ続く

QooQ